『ククーシュカ』

 試写のご案内をいろいろいただくのですが、最近は映画絡みの仕事は少ないので遠慮するようにしています。が、これは早く見たい!と拝見してきたのが、『ククーシュカラップランドの妖精』。ロシア映画ですが、1944年、第二次大戦末期のフィンランド最北の地ラップランドが舞台になっています。まさにムーミンが生み出された時期です。
 物語は、命を落としかけたフィンランド兵とロシア兵が現地に住むサーミ人の女性アンニに助けられるが3人はそれぞれの言葉を理解できない……というもの。フィンランド兵はドイツ軍の軍服を着せられていたため、さらにややこしい事態に。アンニは4年前に夫をフィンランド軍に徴兵され、男日照りの日々。背景には厳しくも美しい大自然。互いに意志の疎通ができないまま、3人は不思議な関係を形成していきます。
 日本語字幕で見ると残念ながら「言葉が通じない」という苛立ちを実感することは難しいのですが、ユーモラスな雰囲気はとてもよく伝わるので、ウィットに富んだあたたかい映画として楽しむことができます。全体を包んでいる空気があたたかいからこそ、後半の“事件”が胸に迫り、また最後のオチが心地よい余韻となって残りました。
 北欧好きなら、ラップランドの風景とサーミの昔の暮らしぶり、ファッションだけとっても見る価値あり! サーミフィンランドの習慣の違いなども興味深かったです。もちろん、ムーミンは影も形もありませんが(サブタイトルの「妖精」も寓意であって、妖精が出てくるわけではありません)、トーベをも苦しめた戦争の一端をかいま見ることはできます。
 アンニ役のクリスティーナ・ユーソは本当にサーミ人の女優さんらしいのですが、無邪気な少女のようでいて、ときどきハッとするほど色っぽかったり、逞しい老女のようだったり、すごい存在感! 来日の予定もあるそうなので、インタビュー等を目にする機会があったらお見逃しなく。
 ちなみに公開予定は3月、渋谷シネ・アミューズほか全国ロードショーです。
 映画といえば、ヘルシンキでロケしたという日本映画『かもめ食堂』もおもしろそうです。小林聡美×片桐はいり×もたいまさこ演じる3人が、ヘルシンキの街角に食堂は開店するお話だそうな。こちらも春、シネスイッチ銀座で公開予定です。