『ブロークバック・マウンテン』

Too2006-04-13

 公開が終わってしまいそうなので、『ブロークバック・マウンテン』を見てきました。
 アカデミー賞などで話題にのぼるまで、しばらくの間、なにやらマッチョな職業の男性ふたりのラブストーリーという粗筋と、『バックドラフト』が頭のなかで混じったらしく、消防士カップルの話だと思い込んでいました。
 設定が60〜70年代なのはわかるのですが、最近作られた映画とは思えないクラシカルな内容でした。もちろん、21世紀になった今だって、古い慣習に縛れた社会や偏見に凝り固まった人々は存在しますけど(この映画を公開禁止にしようとした区域の人とか)。
 アニー・プルーの原作を読んでいたので、とてもとても忠実に、ある意味、淡々と映画化したんだなぁという印象。アン・リーはどっちかっていうと長丁場が得意な監督ですしね。
 噂どおり、風景がとてもきれいでした。俳優にあまり老けメイクをしなかったせいか、一夏の美しい思い出だけが際立ってキラキラしていたふうには見えなかったのが惜しい。
 原作翻訳本のあとがきにもあるのですが、ジャックの身体的コンプレックスと父親の虐待の描写が削られているため、最後のジャック父の印象と言葉のニュアンスが若干違って受け取れます。ゲイ=過去に不幸な出来事があった、というような短絡的な図式は好ましくないので、そこを削ったこと自体はよいと思うのですが、横暴で頑固な印象のジャック父が、息子とその男友達に牧場を建て直してほしかったかのよう(=イニスがみずから幸せになるチャンスを逃したかのよう)にも受け取れたのがちょっと意外。あと、ジャック妻のラリーンはイメージどおりだったのですが、イニスとの電話で感情の揺れを見せていたのも意外。
 いちばん最後のイニスのセリフは蛇足だった気がしますが、おおむね、いい映画でした。