『ムーミン谷のひみつの言葉』+『芸術新潮』

Too2009-05-31

 書いてなかった気がするので、さっくりと。

 昨日に引き続き、冨原眞弓先生の著作です。『芸術新潮』も実質「冨原眞弓責任編集」といった体なので、冨原先生スペシャルデイズ、です(笑)。
 筑摩書房ムーミン・コミックスの翻訳も手がけた冨原先生が、ムーミン・コミックスから1コマずつ、絵とセリフを引用し、解説をなさっています。前半はキャラクター別で、メインキャラはもちろん、ウィムジーさん、ブリスクさんといったコミックス限定キャラも登場。見開きの左に絵とセリフ、左に解説という、デザインもかわいいです。後半は「秩序と自由のはざまで」といったテーマごとに、コミックスの引用と長め(3ページ)の解説がつきます。
 こういう「周辺本」って、いくつか種類があると思うのですが、昨日の『トーヴェ・ヤンソンとガルムの世界〜ムーミントロールの誕生』や『ムーミンのふたつの顔』は作品の背景や作者のことを紹介したもの。この『ひみつの言葉』や『ムーミン谷のひみつ』はキャラクターや物語そのものについて読み解いたり分析したりしたもの。
↓これも後者ですね。

 で、個人的にはノンフィクションよりフィクションが好きで、「○○論」みたいな本が苦手なので、そういう解説本というのはなんのためにあるのか、よくわかりません。この『ひみつの言葉』も、どんな人に向けて書いた本なのだろう、と。たぶん、1)コミックスを熟読していて他の人の意見も知りたくなった人(=マニア向け)、2)ムーミンコミックス(もしくは漫画全般)は読まないけどムーミンの世界が気になる人(=コミックスの入門書的な役割)、3)ムーミンに関するものならなんでも買う人(=コレクター向け)といった読者が想定されていると思うのですが(勝手な分析ですけど)、わたしは言わずと知れた3)のタイプです。ですから、じっくり読んで感想をブログ等で公開するのは1)の域に達してからにしたいと思います。2)の立場でこれを熟読すれば、1)に到達しやすくなるのかもしれませんが、やっぱり、まずは自分自身の感覚で原典を読みたい。あ、でも、「ムーミンは好きだけど、コミックスはまだ買っていない」という方は、この本の左側、引用部分だけを読んでみるのもおもしろいと思います。気になる「言葉」があったら、その巻のコミックスを紐解けばいいのでは……って筑摩書房の思うツボかい(笑)! 
 追記:やっぱり気になったので、読んでみた感想をちょいと追加。キャラクターの分析など、基本的にさっぱりした文章で、フラットな表現が多いので、違和感なくサラサラと読めます。「えっ、そう?」と反論したくなるような部分はほとんどなく、「ああ、そうだよね〜」「そういえばそうだっけ〜」という感じ(熱く、「そうそうそう!」と頷く感じでもない)。ただ、気になったのは取り上げているエピソードの重複。たとえば、クリップダッスが預けられる話とか(「おかしなお客さん」)、ムーミンの尻尾が金色になる話(「黄金のしっぽ」)など、「あれ、また?」と思う表現が何回か出てきます。これ、連載(筑摩のPR誌とかに)であれば、すごく納得がいく企画なんですが、どこにも「初出」のクレジットがありません。だとすると書き下ろしなのかなぁ。それにしては見開き部分の文章量が統一されていないのも気になる(細かい話ですみません〜。15〜17行とバラつきがあるんです)。まぁ、コミックスに詳しくても詳しくなくても、それなりに楽しく読める本だと思います。

芸術新潮 2009年 05月号 [雑誌]

芸術新潮 2009年 05月号 [雑誌]

 ちょっと時間がなくなってきたのと他の方もいろいろ書かれているので、簡単にまとめると、写真が素晴らしいです。見たことのない写真も多いし、印刷やデザインもすごくいい。これが「トーヴェ・ヤンソンのすべて」ではけっしてないと思うけれど(何度も書きますが、何十年も連れ添ったパートナーの存在なくして、その人の「すべて」を語れるとは思えませんので)、両親/兄弟との関係、ムーミン以外の作品の紹介、クルーヴハルの写真、トーヴェを知る人のインタビューなどなど、盛りだくさん。これを読んでくださっている方はみなさんもうとっくに買われたと思いますけど、楽天ブックスでは品切れです(次の号が出ているので、もう店頭にもあまりないと思います)。Amazonはまだ定価の新品もありますが、なんと、中古がすでに高値になっています! まだ買ってない方はお早めに〜。わたしはもう1冊買っておくかどうか思案中です(笑)。