「ムーミン谷の冬」展

Too2013-11-03

「YOSHiNOBUがおくる羊毛フェルトムーミン展 -ムーミン谷の冬-」に行ってきました。写真を追加しておきます。
 初日の昨日はトークイベント「ムーミンを絵から読み解く YOSHiNOBU(造形作家)×横川浩子(講談社 編集部)」が行われたため、このような一列の展示だったのですが、今日以降はまたレイアウトが変わるそうです。

 入り口から、『ムーミン谷の冬』のストーリーに沿った構成になっています。まずは、“目覚め”。リスに起こされてしまったミイのシーンです。すみません、本来はミイが箱に入った状態なのですが、出して見せてくれたところを撮ってしまいました。ミイは360度どこから見てもいいように作られていますので、こういう飾り方もできるよ、という例です。すばらしいしっぽもったりすとセットでの販売。もともと動物作品を作られている方なので、りすもさすがの出来!

 イラストレーターである配偶者の方の手による箱にも注目。イラスト用の紙を2枚重ね、コーヒーで汚し、原画どおりに留め具をわざとはずしたそうです。でも、箱に文字って入ってましたっけ!?

 まるっこい形がとてもかわいいです。個人的には表情は前作のミイのほうが好きかなぁ。

 キービジュアルにもなっている「雪玉」のシーン。ムーミンは前よりぐぐっとかわいくなりました! 

 おしゃまさんもハガキなどの写真より実物のほうがかわいかった! トゥーティッキのモデルであるトゥーリッキの写真を参考になさったそうです。

“冬の生き物たちとの出会い”パート。モランも前作よりコンパクトサイズで、モランらしさがUP!

 どの角度から見てもいいように作られたそうですが、真横からのフォルムはちょっとカクカクしすぎのような?

 ご先祖さま、かわいー!

 暖かそうな毛の感じがいいですね。

 しっぽ。

 サロメちゃん! ホルンを覗き込む様子が、見事に再現されています。

 表情がほんの少しキリッとしすぎている気がします。はにかむような愛らしさをあと一匙!

 冬のヘムルとめそめそ。

 めそめそはもう完璧な再現度! やっぱり動物はフェルトとの相性がいいのかもしれません。

 反対側から。写真だとよくわからないと思いますが、ヘムレンの肌、マフラー、帽子など、素材感の違いがすごいです。

“春の訪れ”パート、帰ってきたスナフキン! スナフキンはいちばん、難産だったそうです。前回も苦労なさったとおっしゃっていましたが、前よりすごくかわいくなった! ただ、気になるのは顔と体のバランスと、足の長さ。作者いわく、原画の等身に忠実に作ったとのことで、足が短いのではなく、コートが長いそうです。ちゃんとコートの下には足も作られています。小さな足でしっかり立つのもすごい! 帽子の花でも、春の訪れを表現したそうです。

 写真のアングルにもよるのですが、後ろ姿のほうがしっくりくるかな。あくまでもわたしの意見ですが、平面を立体に起こすわけですから、原画そのままをなぞるよりも、バランスを見ることも大事なんじゃないかと思います。正面から見たスナフキンはとにかく“顔がデカイ!”と感じてしまいました。

 今回、いちばんの驚きはこの水浴び小屋! なんとフェルトで小屋!! 春がきて、雪が溶けて増水しているので、土台の部分は低めに作った、など、こだわり満載。

 目を閉じて、ひとり、冬のことを思い出しているムーミンの表情もいいですね〜。

 さて、トークのほうですが、長年、ムーミントーベ・ヤンソンを担当し、誰よりもその世界にお詳しい講談社編集部の横川浩子さんと、ムーミンにはあまり詳しくないことを公言なさっているYOSHiNOBUさん。前回の川崎亜利沙さんとのトークのように、YOSHiNOBUさんがムーミンについて学ぶという側面もありつつ、今回は横川さんが「ムーミンを作ろうと思ったきっかけは?」とか「どういう工程で作るのですか?」等、気になっていたことを質問してくださって、とても濃い、充実したトークとなりました。作り続けようと思えば、いつまででも作れる(中断して何年か先に再開することもできる)フェルト作品、「いつ作業を止めるのですか」という質問に、(違う表現だったかもしれませんが)「息をしていると思ったとき」と答えていらしたのが印象的でした。先日、クルーヴハルを訪れた横川さんの秘蔵写真や、古いムーミン本の挿絵など、レアな資料が拝見できたのもうれしかったです!
↓横川さんが最近、作られた本。素晴らしいです!

↓この画集も横川さんのご担当。

→イベント詳細はセキュリティチェックが必要です
 以下、やや個人的な感想。長いので、興味のある方だけどうぞ。
 今回のトークで、わたしが抱いていた違和感がはっきりしました。ここに書くのが適切かどうかわかりませんが、簡単に。今回のトークテーマは「絵から読み解く」、YOSHiNOBUさんは「トーベ・ヤンソンは自身のことを画家だと思っていた。だから、挿絵をじっくりと丁寧に分析して、フェルト作品にしています」というようなことをおっしゃっています。先入観を抱きたくない、だったか、情報量が多すぎると混乱する、だったか、正確な言い回しは忘れてしまいましたが、アニメもコミックスも他の立体物もあえてご覧にならず、前回は画集を主な資料としてお作りになったそうです。今回はギャラリーオーナーが好きで薦められた『ムーミン谷の冬』を“20回も中断しながら”お読みになり、「次は何を読もうか何を作ろうか、楽しみ」とのこと。本を読むのが得意な人ばかりではないことはわかります。トーベが絵を長く学んできた人であり、コミックスをラルスと分担することになったときもストーリー作りより絵を好んで担当したことも知っています。でも、トーベは挿絵のまったくない小説も書いていたわけで、作家(文筆家)でストーリーテラーだという側面も、無視はしてほしくない。トークのなかで「物を持つのが嫌いなスナフキンのリュックがぱんぱんなんです。たぶん、お土産を持ってきたんでしょうね」との発言があったのですが、いやいや、スナフキンだってテントとか鍋とか旅に必要な道具は持ってるよ! 谷底に鍋などを捨てたのは荷物を減らす必要に迫られたからだよー! スナフキンのお土産は旅の間にできた歌だけ、物を持って帰ってくるわけないじゃん〜! と、やっぱり、ストーリーや背景をご存じない方が作ると、何かちょっとズレていくような気がしてなりません。まだ書きたいことはあるのですが、ディスりたいわけではないので、YOSHiNOBUさんはビジュアル重視、わたしはムーミンの物語や世界観を愛している、そこが違和感の元だったんだ!という発見だけをメモしておきたいと思います。