びっくりムーミン

Too2006-06-09

 昭和45年発行の『ハレハレムーミン』には「ハレハレムーミン」「ムーミンロビンソン」「ムーミンの大西部」の3話が収録されています。「大西部」が、筑摩書房版のムーミンコミックス2巻収録の「タイムマシンでワイルドウエスト」と同じ話、というのはタイトルからも一目瞭然ですね。
「ハレハレムーミン」はというと、筑摩版では11巻収録の「おさびし島のご先祖さま」、福武書店(ベネッセ)版では「ムーミンの冒険日記 3」『ご先祖さまは難破船あらし!?』のことです。それぞれ訳者が違うので、比べてみようと思って並べてみたら、なななななんと! 昭和版だけ、向きが違うのです。最初は単純に右開きと左開きの違いだと思っていたのですが、コミックスにおいて開く側が逆だということは! 絵が反転してます!! 日本の書物は基本的に右開きなので、矯正しちゃったんですね。すごい発想だ……。

 絵が上手ではないマンガ家さんだと、左右どちらかの顔しかうまく描けないので、得意なほうで描いて反転させて使う、という手を使います。反転させると歪んだ部分が際立ってみえるので、描いた絵を鏡に映してチェックすることもあるそうです。でも、さすがトーベ・ヤンソン、反転していてもまったく違和感がありません。


 訳の違いを見てみると、例えば、食事中にピクニックに行こうと言い出したムーミンとママに対して、
昭和版(おっと訳者名がない! 解説者は草森紳一)ノンノン「これ食べてから」
福武版(野中しぎ訳)フローレン「口の中のはのみこんでもいい?」
筑摩版(冨原眞弓訳)スノークの女の子「食べおわるまでちょっと待ってくれる?」


昭和版 パパ「むねがわくわくするよ」
福武版 パパ「ピクニックはだあいすきだ!」
筑摩版 パパ「遠出か いいなあ!」


 天気が悪いにもかかわらず離陸を強要されて墜落したヘリコプターいわく。
昭和版 「まったくムーミン一家にはあいそがつきるよ」
福武版 「このフーテンのムーミン一家にはもうこりごりだ」
筑摩版 「こんなふざけた家族とつきあうのはもうごめんだね!」


 昭和版はわかりやすく簡略(やや意訳)、福武版はちょっとお茶目、筑摩版は原文に忠実なのかどうかはわかりませんがきっちり訳している印象。しかも、福武版がA4変形の1ページに2段でゆったり組んでいるのに対し、筑摩版は18×20センチぐらいの小型版に3段入れているので、かなり密度が濃いです。